[巨大災害 現代のリスク]<3>浜松市の海岸沿いに整備された防潮堤。すそ野を広げて強度を高めている(8月22日、読売ヘリから)=安川純撮影

〈海嘯(かいしょう)襲来して、岸壁を破壊。高さは20尺(6メートル)以上〉。神奈川県鎌倉町(現・鎌倉市)の「鎌倉震災誌」に残る100年前の津波の記録だ。関東大震災では同県などに最大10メートル超の津波が押し寄せ、200~300人が犠牲となった。
日本では昭和東南海地震(1944年)、昭和南海地震(46年)、北海道南西沖地震(93年)など津波災害が繰り返されてきた。2011年3月、想定を上回る巨大津波が防潮堤や堤防を越え、2万人超の犠牲が出た東日本大震災を機に、日本の津波対策は大きく転換した。同年できた「津波防災地域づくり法」は、将来起こりうる最大級の津波を想定するよう都道府県に義務付け、対策を求めた。
この「最大想定」に基づく津波対策を巡り、沿岸自治体が揺れている。静岡県は3月、同法に基づき、最大想定の浸水域を対象に、津波対策の強化を促す「津波災害警戒区域」を新たに指定した。区域を抱える自治体はハザードマップ作成などが義務付けられるが、8市町は指定に同意せず、見送られた。
その一つ、浜松市では20年、地元企業から300億円の寄付を受け、全長17・5キロ、高さ最大15メートルの巨大防潮堤が完成したばかりだ。県が想定する南海トラフ地震の最大級の津波では一部で防潮堤を乗り越えるが、土台が頑丈で津波にも耐えうるダムの工法も導入しており、県は「防潮堤の効果で宅地の浸水を8割減らせる」と見込む。
しかし、国の考えは異なる。同法に基づく最大想定は、東日本大震災で多くの防潮堤が壊れたことを教訓に、少しでも津波が乗り越えれば防潮堤は一律「全壊」するものとして扱う。つまり、巨額を投じた同市の防潮堤も国の考えに基づけば無いに等しくなり、浸水域が一気に広がる。
市危機管理課の吉垣幸和グループ長は「防潮堤が無意味と扱われるのは納得できない」と指定に同意しない理由を語る。県も「防潮堤の強度を評価に反映してほしい」と国に訴える。

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