「“死に逃げ”させない」ぶれなかった主治医 “予測死亡率97.45%”だった青葉被告 4カ月の治療を記した手記 京アニ放火殺人

2019年7月18日、京都アニメーション第一スタジオが放火され、36人が死亡、32人が重軽傷を負った。日本を代表するアニメスタジオを襲った悲劇は、世界中に大きな衝撃を与えた。

青葉真司被告(45)は、ガソリンをまいて火をつけた殺人などの罪で逮捕・起訴された。

全身の93%にやけどを負った青葉被告は2日後、京都の病院から大阪の近畿大学病院に搬送された。

上田教授の手記より:7月19日 人としての原形をとどめておらず、「こいつがたくさんの命を奪った犯人か」という陰性感情はなく、もうすぐ絶命するだろう…それしか感じなかった

鳥取大学医学部付属病院の上田敬博教授:事件が起きた日に各医療機関に電話しまくって、被害に遭われた負傷者を1人でも、うち(近畿大学病院)はやけど強いので送ってくれって、当時の初療担当している医者や病院に電話して、片っ端からかけていったんです。結局1件も転院依頼はなくて

鳥取大学医学部付属病院の上田敬博教授:でも、「もう1人、実は診てほしい人がいる」って言われて、ちょっと嫌な気はしましたけど、もしかしたらと思ったらやっぱりそうだった。犠牲になられた方とご家族、被害に遭われた方とそのご家族のためには、「死に逃げ」させてはいけない。その思いが強くて、絶対容疑者を死なせちゃいけない。それだけです。そこはずっとぶれなかった

青葉被告が搬送されると、上田教授は4回に分けて全身の壊死(えし)した組織を取り除き、コラーゲンなどでできた「人工真皮」を貼りつけていく。その上で、わずかに残った正常な皮膚から作った「自家培養表皮」の移植を行った。

ただ、ここで高いハードルがあった。「自家培養表皮」は皮膚の細胞を人工的に培養するため、作るのに3週間から4週間かかる。

完成を待つこの間、上田教授たちは血圧の維持や感染症への対策など、命をつなぐギリギリの戦いを続けていた。約4カ月の治療期間 克明に手記に記録

手記には、揺れる胸の内が記されている。

上田教授の手記より:予測死亡率は97.45%。手術のことで頭がいっぱい。起床時から激しいめまい、疲れが全く取れない。自宅のインターホンが鳴った「ウエダタカヒロさんの自宅はここでしょうか?…新聞のものですが」余計な緊張が増えただけだ、くそ野郎。死なせてはいけない

鳥取大学医学部付属病院の上田敬博教授:フロアが、上がICUなんですけど。なんかあったら僕のところにすぐ連絡がくるのは分かってるんですけど、その前にテレビとかネットに、「もうあかんかった」っていう情報が出るんじゃないかっていう錯覚になるので、そういうのが出てないかなって思うと、すぐ上に行って状態診たり、「まだ生きてる」とか、そういう感じ。2時間おきに繰り返してる

血圧の平均値と尿の量を表したグラフで見ると、青葉被告の容体は、「自家培養表皮」の移植手術を行った時期を境に、みるみる回復していった。

上田教授の手記より:スピーチカニューレを入れ替えすると、声が出たことに驚いていた。「こ、声が出る」「もう二度と声を出せないと思っていた」そういいながら泣き始めた

鳥取大学医学部付属病院の上田敬博教授:で、そのあともずっとその日は泣いていたので、夕方にまた「なんで泣くんですか?」って聞いたら、「もう二度と声が出せないと思っていた」って言って、それが嬉しかったんだと思います。

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