エンゼルスは主力6人をウエーバーにかけて白旗、ヒリヒリするどころか最悪の9月、右肘靱帯損傷でオフは買いたたかれる……。

今シーズン中の投手を断念せざるを得ない故障が判明してからというもの、大谷翔平(29)に関する情報はマイナスのものがほとんどだ。しかし、ケガの功名もあるのではないか。
日本時間31日のフィリーズ戦で95打点目となる適時打を放ち、リーグトップのガルシア(レンジャーズ)とタッカー(アストロズ)との差は「2」に。本塁打王(44本は2位に9本差)のタイトルに加えて、打点王の2冠も視野に入った。

残り28試合は打者に専念する予定。投手としての練習や調整に費やした時間を、相手投手の研究や打撃練習に充てることができる。打者としてはこれまで以上のパフォーマンスが期待できるのではないか。
「本塁打は51、52本になり、タイトルはほぼ確実とみています。打点は113~114くらいの争いでしょうが、タッカーもガルシアも優勝を争うチームの主力で警戒されますし、ガルシアは実績がないうえにペースも落ちている。大谷は打点王の可能性もあります」(スポーツライター・友成那智氏)
その今季以上に打者としての期待が膨らむのが来季だ。仮に今オフ、2度目のトミー・ジョン手術を受ければ、来季はいや応なしに打者に専念せざるを得ない。前回の18年はシーズン終了と同時に手術を受け、翌年の5月に復帰。MVP2度のハーパー(30=フィリーズ)は昨年11月に同じ手術を受け、6カ月で戦列に戻った。打者として、ほぼフルシーズンのプレーが可能になる。今年以上に打つことに集中できるのだ。
来季、打者に専念することで今年以上の成績が残せるなら、再来年、今度は投手に専念すれば、投げる方もこれまで以上の数字が期待できるのではないか。
それがメッツかドジャースかヤンキースなのかは定かじゃないが、実際、昨年のトレード期限以前には大谷を投手と野手、隔年で起用するプランを温めていた金満強豪球団があるといわれる。「同時にやる上ではあまり目指さなくてもいいかな」
かのイチローはかつて、大谷の二刀流に関してこう言っている。
「1シーズンはピッチャー、次のシーズンは打者で、サイ・ヤング賞と本塁打王を取ったらとか……。その(1年おきの)二刀流は面白いと思う。20勝するシーズンがあって、その翌年に50本打ってMVP取ったら化け物ですよね。でもそれができなくはないですから」
できないどころか、大谷は今季、二刀流をやりながら本塁打王のタイトルをほぼ確実なものにしたではないか。
大谷自身、昨年11月のNHKスペシャル「メジャーリーガー大谷翔平 2022 アメリカの新たな伝説へ」のインタビューの中で、メジャー史上初の投打の規定到達についてこう言った。
「同時にやる上ではあまり目指さなくてもいいかなと思う。どんな形のツーウエー(二刀流)のスタイルがあってもいいと思う。これとこれをやらなければならないという形である必要はない」
ならば投打、隔年の二刀流はアリだろう。前出の友成氏がこう言う。
「1年間、まったく投げないとか打たないというのは、感覚の問題もあるので現実的ではありませんけれども、投手と野手、どちらかに軸足をおいて隔年でプレーするというのは、体にかかる負担を考えても理想的だと思いますね。一昨年は打者として46本塁打をマークしてMVPを獲得。昨年は15勝(9敗)、防御率2.33、サイ・ヤング賞投票4位と投手としてブレークした。そして今年は2冠王を視野に入れている。実際に残している成績も投手と野手、隔年ですから」
今回の打者専念が投手と野手、隔年の二刀流の引き金になる可能性はありそうだ。
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