家でも、学校・職場でもない「もう一つの居場所」が大切だと言われます。人間関係で悩みが生じたり、リラックスして過ごせる場所が必要になったりするからです。年間連載「つながる」第4部は、そんな場所を作った人と、訪れる人たちのお話です。

ジョイフル三(み)の輪(わ)商店街(東京都荒川区)の一角にある「なにかし堂」は、好きな時に立ち寄って、思い思いに時間を過ごせる場所だ。定休日の水曜を除き、午後1~7時にオープン。近所の子どもや若者、大人たちが、引き戸を開けて次々と入ってくる。
「『街の図書館』をやってます。子どもも大人も、誰でもどうぞ」。店主の野口貴裕さん(29)が笑顔で迎える。本を読んでも、誰かとおしゃべりしても、ちょっと椅子で休んでいくだけでも構わない場所だ。
この場所が「多世代の居場所」になったのは偶然だという。約3年前、空き店舗を借りて2階に住み始めた野口さんが、どう活用するか考えながら椅子や机をそろえ、1階のシャッターを開けていたら、地域の人が自然に立ち寄り始めた。近隣の子ども食堂とのつながりで来る子もいた。「図書館にしたら、もっと多くの人が来てくれるかもしれない」と本を増やした。
「いろいろな人が来るようになって、みんながやりたいこと、『いい』と思うことを続けていたらこうなった」と振り返る。
週に4回開く個別指導の塾も、遊びに来る子どもたちの保護者の要望で始めたものだ。「学校の勉強が苦手な子も、学ぶこと、知ることの喜び、『できた』という気持ちを取り戻してほしい」と野口さんは話す。
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