帯状疱疹(ほうしん)の患者が増えている。赤くて痛い発疹や水ぶくれが帯状に出る皮膚疾患で、80歳までに数人に1人がかかるともいわれるありふれた病気だが、ここ25年間で患者数が1・5倍になったとのデータがある。高齢者に加えて若年層にも広がっているという。治療が遅れると神経性の強い痛みが残る場合もある。皮膚科医は早期発見、早期治療を呼びかけている。

帯状疱疹は、子どもがかかりやすい水ぼうそう(水痘)と同じ原因ウイルス「水痘・帯状疱疹ウイルス」が引き起こす。初めて感染すると水ぼうそうを発症し、多くは1週間程度で治るが、体内でウイルスは消えず、神経節に潜伏する。
体内では数十年にわたり休眠状態で、加齢や疲労、強いストレス、病気などで免疫力が低下すると、再び活性化。神経に沿って体の表面に現れ、帯状疱疹を発症する。
患者数の全国的なデータはないが、1997年から宮崎県内の診療所や病院計約40施設が続けている調査「宮崎スタディ」によると、発症者数は増加傾向。97年の4243人から2022年は6467人へと52%増加。人口千人当たりの発症率は年間3・61‰(パーミル、千分率)から6・15‰へと伸びた。増加の背景には高齢化があるが、特に2014年を境に上昇し、年代別では20~40代の増加が顕著だという。
宮崎スタディをとりまとめている外山皮膚科(同県日南市)の外山望院長は、14年から増えた理由として、水ぼうそうワクチンの定期接種開始を挙げる。ウイルス感染して獲得した免疫は時間の経過とともに弱まるが、子育て世代は水ぼうそうを発症した子どもの看病などで再びウイルスに触れ、免疫が強くなる「ブースター効果」を得ていた。それが14年10月に1~2歳児を対象に水痘ワクチンが定期接種化され、水ぼうそうを発症する子どもが減少。その結果、子育て世代がブースター効果を得る機会が減り、帯状疱疹の発症率が高まったというわけだ。
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